円形脱毛症は後天性脱毛症の中で最も頻度が高い疾患で100人に1~2人に発生しています。基本的に脱毛した面積が広いほど、また脱毛してからの経過が長いほど難治なことが多く、重症度分類、年齢に応じて適切な治療が必要となります。
また、円形脱毛症には、甲状腺疾患(8%)、尋常性白斑(4%)、SLE、関節リウマチなどの自己免疫性疾患を合併することもあり、場合によっては採血で全身を調べる必要があることもあります。また高頻度にアトピー性皮膚炎(23%)をはじめ多くのアレルギー疾患を合併していることが知られています。また、爪に小さな凹み、横の溝などの変化が1/4の方に見られます。患者さんの1/4は15歳以下で始まり、全頭型や汎発型などの重症の症例も小児に多く見られます。発症すると自然に数ヶ月で治ることが多いですが、再度ほかの所に脱毛が出現し、繰り返すことが多いです。
いまだにストレスが原因という医師もいますが、一般的に精神的ストレスとの直接の関連性についての科学的根拠は乏しいと言われております。また、残念ながらいまだに多くの医院では漢方薬とステロイドもしくはフロジン外用とやや根拠の乏しい治療のみを行っているのが現実ですが、円形脱毛症は自然軽快することも多く、これで効果があったと考えられてしまうことも多いようです。皮膚の中にある髪の毛の根本(毛包)の周りに炎症を起こす細胞が集まってきて、その結果髪の毛が成長しなくなってしまうのが原因です。ただ、なぜその現象が突然起きるのかはわかっていません。
治療
年齢及び脱毛面積、タイプに応じて、さまざまな治療法があります。
■SADBE療法(局所免疫療法)
患者様の年齢を問わず、多発型、全頭型や汎発型の症例に第一選択肢として行うべきと日本皮膚科学会の治療ガイドラインでも強く推奨されているエビデンスに基づく治療です。要は局所に人工的かぶれを誘発する治療方法です。
■SADBE療法のやり方
①上腕内側に1~2% SADBEを48時間貼付
(色素沈着のリスクがありますので痒くなったらすぐはがしてもかまいません。)
②脱毛部に低濃度のSADBEを塗布します(綿棒で1~2週間に1度通院の上塗布します)。
③洗髪は外用の10~12 時間後に行います。
④SADBEに対して反応が乏しくなったら順次SADBEの濃度を上げていきます。
(原則としてステロイド外用と同部位の併用は行わないようにします。)
⑤発毛が認められてからも3~4 週に1 度SADBEを塗布すると効果的です。
ケナコルト(ステロイド)の局所注射
円形脱毛症が単発で長期続いている患者様に効果的です。
ステロイド内服療法、内服パルス療法
脱毛が急速に進行している患者様に対して行います。ステロイド内服に伴う副作用に注意して治療を行う必要があります。
抗ヒスタミン薬
アトピー性皮膚炎等を合併している円形脱毛症の患者様には効果がみられます。多くの皮膚科で処方されている円形脱毛症に対する漢方治療(グリチロン、セファランチン)よりも根拠のあるデータが多くみられます。
漢方薬
グリチロン、セファランチンの内服は、現段階では十分に実証されていませんが、ほぼ全ての皮膚科でこの治療が選択されています。保険適応のメリットがあります。
ステロイド外用、フロジン液、液体窒素療法
ほぼ全ての皮膚科で、この中のいずれかの治療が選択されていますが、実は実証が不十分との報告もあります。ただしステロイド外用に関してはステロイド局所注射の効果が高いこと、また毛包周囲へのリンパ球浸潤が円形脱毛症の病理像でみられることから効果はあると考えます。
エキシマライト ナローバンドUVB 光線療法
アトピー体質で円形脱毛症を伴うかたには効果的です。大別して広い範囲に照射をできる全身型ナローバンドUVB、局所に照射できるエキシマライトがあります。保険適応で治療可能です。
2022年6月20日より、JAK阻害薬(オルミエント)が保険適応で投与可能となりました。
❶まず、当院で感染症スクリーニングの採血を行います(検査項目の関係で、平日のみの受付となり、土曜日・祝日及びその前日の採血は不可です。内服前、内服後1か月、3か月、6か月で採血が必要ですが、短期投与の場合は、頻回の採血は必須ではありません。15歳で中学生の方(15歳未満の方には投与できません)は、小児医療費の範囲内で採血可能。結果は1週間前後で出ます)。
❷併せて、結核のスクリーニング検査の為、胸部レントゲンの撮影が必要となります。❶の採血結果が問題なければ、採血結果と、当院で連携をお願いしている近医内科クリニック様への紹介状を持参して、内科クリニック様を受診して頂き、胸部レントゲンを撮影します(内科クリニック様受診前に、お電話で予約を取って頂きます。詳しい流れは、来院時にご説明いたします)。
❸採血結果、レントゲン結果を確認し、問題が無ければ、初回投与開始となります。
(❶⇒❷⇒❸の流れで進む為、JAK阻害薬開始までに、3回の来院が必要となります)
服用中は、主に下記症状に注意が必要です。
① 発熱、咳、寒気、だるさ等→感染症の疑い
② チクチク、ピリピリした痛み、痛みを伴う赤い湿疹や水ぶくれ→帯状疱疹の疑い
③ にきびの増悪
上記症状が見られた場合は、症状が軽快するまで、薬剤の投与を一時中止する場合がございます。
高額医療費制度や医療費助成制度が適用される方もおり、企業によっては付加給付制度や学生などへの医療費助成制度などが適用される方もいます。
2023年9月27日より、JAK3/TECファミリーキナーゼ阻害剤(リットフーロ)が保険適応で投与可能となりました。
こちらは、12歳以上の小児患者にも保険適応で投与が可能です。オルミエント同様、投与前のスクリーニング検査(採血、胸部レントゲン撮影)が必要になります。高額な薬剤ですが、小児患者は小児医療費の範囲内で投与が可能であり、他の治療が奏功しない難治性の円形脱毛にお悩みの方にも、効果が期待できる薬剤となっております。