陥入爪 巻き爪

陥入爪とは、爪甲が側爪郭にくい込み、爪郭部を損傷し痛みを伴う状態を言い、巻き爪は爪甲が両側縁に向って深く弯曲しているのみで痛みを伴わない状態です。
巻き爪と陥入爪は合併して起ることもあります。これらは人口10人に1人の割合でみられると言われ、症状のない場合も、予備軍となっていることがあり、注意、ケアが必要です。日常良く経験する疾患ですが、本症に対する治療法はいまだ医師独自の経験に由来する部位があり確立されておらず、抜爪等の不適切な治療を行う施設も依然多く、患者様が病院を転々とする例もめずらしくありません。
爪が幅広いタイプの陥入爪、弯曲爪、爪甲鉤弯症に大別され、それぞれにあわせて治療方法が異なります。また爪周囲(爪郭)に感染を伴う場合、爪の刺激により化膿性肉芽腫等を形成した場合は、その治療を同時に行うことがあります。爪水虫(爪白癬)が巻き爪の原因として多々あるため、検鏡し菌がいた場合はその治療も併用すると効果的です。

治療法

当院では、爪の状態に応じて、以下のワイヤー法、フェノール法、アクリル人工爪法、ガター法、テーピング法、コットンパッキング法などを行っています。

①ワイヤー法
弯曲爪に対して良い適応です(幅広く弯曲していない爪には良い適応とはいえません)。足をぬるま湯につけて、爪をふやかした後、伸びた爪の白い部分に注射針、またはドリルで2カ所穴をあけます。爪切りで切る部分なので痛みは伴いません。爪にあわせワイヤーを選択し穴に通して短くカットし、ワイヤーを固定します。爪の変形の度合いによっては、完治するまでに3~8カ月程度の時間が必要になることがあります。この矯正方法なら、多くの弯曲爪タイプの巻き爪に対応可能ですが、深爪をした直後はワイヤーを挿入するスペースがなくなってしまうため、他の方法(ガター法、テープ法等)で時間稼ぎをする必要があります。また4~6週ごとにワイヤーの入れ替えが必要になることがあります。

②フェノール法
爪が幅広いタイプの陥入爪に対して良い適応です。化膿を起こしていても手術が可能で、健康保険が適応になるのがメリットのひとつです。デメリットは、爪の幅が狭くなってしまうこと、弯曲爪に対して施行すると、再度弯曲をきたしてしまうことがあること、不十分なフェノール処置で爪が再生してくること、両側同時に行うと、爪が生えてくる方向が変わってしまうリスクもあります。侵襲的な治療にはなりますが、痛みが強く、幅広い爪で弯曲の少ない陥入爪の患者様には依然良い適応と思われます。化膿性肉芽腫が併発している方は同時に切除可能です。

③アクリル人工爪法

爪の辺縁が十分伸びていないため、ガター法が行えない場合などに適応となります。アクリル樹脂を爪の上にのせて人工的に爪が伸びた状態を作り、周囲の皮膚へのくいこみを緩和します。深爪が原因である場合や、先端がくい込む陥入爪に対して行います。痛みが強い時は、局所麻酔下に行います。

④コットンパッキング法
爪囲に炎症がある場合の適応で、症状が軽い巻き爪、陥入爪で行います。爪の角にコットンパッキングを挿入し固定します。痛みが挿入後より改善し、慣れれば患者様自身でできる治療です。

⑤ガター法
爪の角にチューブを挿入し固定します。上記のコットンパンキングと原理は同じですが、安定性が高いです。痛みが挿入後より改善します。医療用の接着剤で固定するため、日常生活の中でチューブが外れてしまう事があるのが欠点です。

⑥テープ法
簡易な方法で安価に治療できます。アンカーをかけるようにテーピング固定をすることで、爪縁と皮膚をテープで引き離します。患者様自身でできますし、タイプによっては非常に効果的です。巻き爪で受診された方には、診察時に、テーピングの仕方などが書かれたパンフレットをお渡ししています。ご希望の方には、巻き爪テープを1束400円(税別)で販売しているので、ご購入いただき、自宅で処置を続けていくだけでも、かなり症状が改善する方もおられます。

日常生活での指導
靴選び、爪の切り方等の指導のみで改善する患者も多々います。

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