ニキビ

○ニキビ(尋常性ざ瘡)について

○発赤が顕著な場合
抗菌薬内服、外用が主体が主体の治療です。発赤というのは炎症細胞が集まっていることを示唆する所見です。
炎症細胞が集まるというのはばい菌によって炎症がおきている場合、また細菌感染と関係なく免疫反応炎症が起きている場合があります。
細菌感染が原因で炎症が起きている場合は内服はテトラサイクリン系ではミノサイクリン塩酸塩、ドキシサイクリン塩酸塩であるビブラマイシンが第一選択薬となります。
この二種の薬剤は抗菌作用に加え抗炎症採用も有しており、皮膚科学会のガイドラインでも第一に推奨されております。抗生剤を使用すると、耐性菌が生じる事もあるため、使用は長くても3カ月以内にとどめ、以後はアダパレン、過酸化ベンゾイル製剤などでの維持療法に移ることが重要です。

○免疫反応が主体の炎症が起きている場合
免疫反応を抑える注射を局所に投与することで、症状は改善します。
○当院の保険診療での外用治療
①クリンダマイシンリン酸エステル(ダラシンTゲル、ダラシンローション)、ナジフロキサシン(アクアチムクリーム・ローション):双方とも抗菌薬でアクネ菌をターゲットにした治療法です。
②アダパレン(ディフェリンゲル)、適切な外用により治療とともにニキビを予防することができます。毛穴の詰まりを改善し、さらに抗炎症作用を持つため、紅色丘疹や膿疱が主体の場合にも有効です。 使用中に、乾燥したり刺激を感じることもあります。殆どが軽い症状で、その多くは軽快していきます(保湿剤などで対応できますので相談ください)。
③過酸化ベンゾイル製剤(ベピオゲル、デュアックゲル、エピデュオゲル)
過酸化ベンゾイルには、
・抗菌作用
・角質層剥離作用
の二つが効果があります。
アダパレンおよび過酸化ベンゾイル製剤の搭乗で本邦のニキビ治療も、やっと世界基準の治療ができるようになったと思われます。 この二つの組み合わせはひりひり感、赤み等は出やすくはなりますが、通常のニキビ治療は保険診療で多くがカバーできるようになったと思われます。

○ニキビ治療のQ&A
Q 生理前に悪化する気がしますが、ニキビと生理は関係ありますか?
A ニキビはホルモン周期で増悪することが知られています。
理由は生理前はdehydroepiandrosterone(DHEA)が分泌され、回りまわってテストステロン経由で男性ホルモン受容体に結合することで、これが毛包の脂腺を活発化させ、ざ瘡の増悪を招きます。一般的には生理開始10日前より増悪します。この時期に合わせて集中的な治療を行う場合もあります。保険診療では適応はありませんが、このタイプのニキビには抗男性ホルモン 剤、低用量ピルなどの内服が著効することがあります。また患者様の肌質にあわせケミカルピーリング治療が有効なこともあります。

Q 洗顔についての注意点はありますか?
A 洗顔は重要ですが擦りすぎると増悪します。洗顔で良い方法は石鹸の泡に顔面をくるませて、手と顔の皮膚が触れないようにする洗顔法です。

Q 化粧品で注意することはありますか?
A 10代でも実に種々の化粧品を使用していることが多いので、化粧品歴は重要です。
「ファンデーションなど、お化粧をすると毛穴が詰まり、ニキビ改善の妨げになる」ことがあります。可能であればファンデーションはパウダーが毛穴のつまりから考えるとお勧めです。またご自身が使っている化粧品がノンコメドジェニックテストを通っている化粧品か調べてみてください。大手の化粧品会社は大概そのテストをしています。

Q ニキビに対して適したメイクを教えてください。
A ニキビ治療に対しては生活習慣、化粧品等も治療に影響する因子の一つです。ニキビがあっても、メイク禁止というわけではありません。重要な点は3つです
①毛穴をふさがない化粧品を使用する。
②ニキビを目立たなくする。アイメイクやリップメイクなどのポイントメイクによって、視線を目元や口元に集めて、ニキビから注意をそらします。
③化粧品はニキビ肌用のノンコメドジェニック製品や油性成分を含まないもの(オイルフリー)または少ないものを使う。コンシーラーやカバー力の高いクリームタイプ、リキッドタイプのファンデーションを使うことは避けましょう。油性成分が多量に含まれていると毛穴をふさいでしまうため、ニキビを悪化させる原因になります。パウダー系がおすすめです。またニキビ痕に対する化粧品としてイエロー系のものを使用すると、褐色調が目立たなくなります。

Q 生活習慣で気を付けることはありますか?
A ●食事
チョコレートを含め、特定の食品がニキビを改善または悪化させるという根拠はありません。1日3食の規則正しい食生活を心がけましょう。便秘はニキビの悪化因子であるため食物繊維の多い食事、またビタミンB群は皮脂の分泌を抑制しますので、多めにとるとよいでしょう。
●頭髪
額に頭髪がふれないように、ヘアピンやヘアバンドで前髪を上げ、髪をまとめましょう。
●入浴・シャワー
毎日の入浴・シャワーで肌を清潔に保ちましょう。ニキビは、顔だけではなく胸元や背中にもできることがあります。リンスやトリートメントなどが首元や背中に残らないように、洗髪後に顔や体を洗いましょう。
●睡眠
睡眠不足は体調不良の原因になり、ニキビの悪化につながりますので、十分な睡眠をとりましょう。
●ストレス
ストレスはニキビの悪化因子です。疲れをためないよう、自分なりのリラックス法で

○当院でのニキビ自費診療

○アゼライン酸(AZAクリア:1本  15g  1980円)

天然の穀物由来の成分で、炎症を抑える作用があります。ニキビに加え、しゅさ(赤ら顔)の治療にも使います。若干、刺激感があるので、痒みを感じる方もいらっしゃいますが、長期的な副作用も無く、安心して使える非常に優れた薬です。ニキビ跡などの色素沈着にも有効で、美白目的で使う方も可能です。妊娠中・授乳中の方でも使用できます。

○ケミカルピーリング(1回:7150円(税込)、別途初再診料がかかります)

ピーリングは余分な角質や皮脂を取り除き、皮膚の生まれ変わりを促す治療法です。現在は自宅で行うことができるピーリング剤も市販されていますが、効果が弱いのが難点です。皮膚科で行われるケミカルピーリングは、より効果が高いぶん、副作用を生じる可能性があるため、医療機関でしか行えないことになっています。ピーリングは、ニキビに対する効果だけでなく、
○メラニンの産生を抑えることで美白効果を発揮。
○コラーゲン産性を誘導し、シワ・たるみといった肌の張りの回復。
○より健康で美しい皮膚が戻る若返り効果(skin rejuvenation)。
○にきび・にきび跡の治療(にきび肌やにきび跡もピーリングを繰り返すことによってかなり改善されます)
○毛穴の開きの改善(毛穴の中の確実なピーリング作用が可能な事・真皮にコラーゲン産生が起こる事により、角栓(つまり)毛穴やたるみの毛穴の改善が効果的です)
など、様々な効果が指摘されています。当院では、日本皮膚科学会のガイドラインでもエビデンスを認められた、サリチル酸マクロゴールピーリングを行っています(1回:6500円(税抜き)、別途初再診料がかかります)。月に1回の施術で、初回から効果を実感される方もいらっしゃいますが、3~5回程度施術していただくと多くの方が効果を実感されます。ピーリング後は一時的に皮膚のバリア機能が低下し、乾燥しやすくなる傾向があります。スキンケアや紫外線対策をしっかり行うことが大切です。

スピロノラクトンによるホルモン治療について
本来は高血圧の治療に用いられる利尿作用のある薬です。また、男性ホルモンを抑制する作用があることから、ニキビの治療に効果的といわれています。その効果は一般的に非常に高く、中止後にリバウンドが起きにくいと言われています。ニキビ治療に対しては保険適応がない為、自費診療となります(1錠110円(税込)。1カ月分(1日1錠内服の場合)30錠で3300円(税込))。
服用方法
1日1回内服します。通常は1日1錠か2錠(25~50mg/日)から始め、その後、3~4錠まで増やし(75~100mg/日)、その後は、効果のある最小の量まで減量する事が多いです。
副作用
下記の症状は減量又は中止によって通常減退ないしは消失しますが,まれに持続する例もございます。
内分泌系  女性型乳房,乳房腫脹,性欲減退,陰萎,月経不順,無月経,閉経後の出血,乳房腫瘤
皮膚症状 発疹,蕁麻疹 (稀に皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群))
精神神経系  眩暈,頭痛,四肢しびれ感,神経過敏,うつ状態,不安感,精神錯乱,運動失調,傾眠
器官障害 肝機能障害・腎機能障害(稀に急性腎不全)・消化器症状
その他 心悸亢進,発熱
〇特に注意すべき副作用
①電解質異常(高カリウム血症,低ナトリウム血症,代謝性アシドーシス等)
また電解質異常に伴い,不整脈,全身倦怠感,脱力等があらわれることがあります。
上記の症状が出現した場合は、直ちに服用を中止し医師に相談してください。
②生理不順、不正出血
スピロノラクトンの男性ホルモン抑制作用により、生理不順や不正出血が起きる事があります。その為、低用量ピルを併用し、正常な月経周期を誘導する事が勧められます。また、内服量が多い場合、稀に排卵を抑制する事ありますが(無月経)、正常な生理周期を誘導するため、エストロゲン・プロゲステロン製剤の注射が必要になる場合があります(低用量ピルの服用、エストロゲン・プロゲステロン製剤の注射については、当院では扱っていない為、婦人科の受診をご検討下さい)。
禁忌
高齢者、妊娠中・授乳中の方、小児
注意事項
利尿作用があるため、夜間休息が特に必要な方は夜間の排尿を避けるため,午前中に服用してください。
服用にあたり必要な検査
服用前と服用後、長期服用中に採血を行い、数値が悪化した場合は服用を中止する場合もございます。
イソトレチノイン(イソトロイン)による重症ニキビ治療について
イソトロインとは
にきびを保険診療で2ヶ月ほど治療しても改善がみられない場合には、イソトレチノイン(商品名はアキュテインやイソトロイン)での治療を検討する余地があります。イソトレチノインの治療により9割近くの患者様で改善が見られるとの報告があります。
にきびの中でも、ぼこぼことしたほほやあごのにきびは非常に難治です。保険診療の範囲の抗生剤の内服や塗り薬で多くのにきびには改善がみられますが、中には年単位で保険診療を受けても治らない方がいます。その場合はイソトレチノイン(英語名はisotretinoin)での治療を検討する余地があります。商品名としてはイソトロイン(Isotroin)、アキュテイン(Accutane)、ロアキュタン(Roaccutane)といった名前で知られていて、当院ではイソトロインを採用しています。アメリカを始め、海外ではにきびに保険適応のある治療効果の高い内服薬ですが、日本では保険では認可されていません。そのため、自費診療になります。当院では月11000円(30日分、税込)で販売しています。
イソトレチノインはにきびにおける角化の異常を改善し、皮脂の分泌を抑えることで治療効果を出します。抗生剤の飲み薬や塗り薬で治りきらない場合や、ぼこぼことした強い腫れを伴うにきびに対し効果的です。
服用方法
イソトレチノイン20mg錠を1日1回飲むことから始めます。通常は、4~5ヶ月間続け、いったん治療終了とします。内服後も効果が長期間持続することが多いです。再発がみられた場合には、再度4~5ヶ月の内服を行います。治りが悪い場合や、治りを早めたい希望がある場合には1日40mg(2錠)に増量することがあります。
副作用
肝機能異常や高脂血症がまれな副作用として挙げられるため、内服開始時と治療から一ヶ月後に採血を行います(自費での採血となります)。用量を増量した場合も、適宜採血を行います。また、内服中は顔、唇、手足の乾燥が進むことが多いですので、しっかり保湿しながら使うことが大切です。採血にて、上記副作用が認められた場合は、その時点で、内服の中止または減量を考慮します。
禁忌 
女性の場合はイソトレチノイン内服中と、内服後1ヶ月は妊娠することができません。以前は、内服終了後6ヶ月の避妊が必要とされていましたが、現在は1ヶ月とされています。
・イソトレチノイン(イソトロイン) 11000円(30錠、1か月分)