水イボ(伝染性軟属腫)

〇水いぼとはどんな病気ですか?

水いぼは正式には伝染性軟属腫ウイルスの感染症です。主に学童期以前の小児に見られます。やや光沢のある常色(肌色)~白みがかったの円形の丘疹で通常2-5mm程度です。治療しない場合でも、基本的には半年から3年程度で自然に治る病気です。止むを得ずに摘出する場合は痛みを伴うため、痛み止めのテープを貼ってから行います。

〇水いぼはうつるのでしょうか?

皮膚の接触による感染で、主にプールで感染が広がりやすいです。皮膚の接触に限らず、ビート板を介してうつることもあります。大人では性行為感染症としてうつることもあります。また大人はHIV患者では悪化しやすいです。

〇水いぼがあるとプールに入れないのでしょうか?

水いぼは接触感染であり、水着で覆われている部位の水いぼではうつることがまれであり、プールを休む必要はありません。平成25年に、日本臨床皮膚科医会と、日本小児皮膚科学会から「皮膚の学校感染症とプールに関する統一見解」が発表されており、そこでは「プールの水ではうつりませんので、プールに入っても構いません。ただし、タオル、浮輪、ビート板などを介してうつることがありますから、これらを共用することはできるだけ避けて下さい。プールの後はシャワーで肌をきれいに洗いましょう。」と述べられています。しかし、実際には、それぞれの学校や水泳教室の現場で対応がまちまちで、水いぼがあるとプールには入らないよう指導している施設も少なくありません。

〇どのように治療しますか?

水いぼを摘出するか、保存的に様子を見て自然治癒を待つかは、医師の間でも見解が分かれており、結論は出ていません。数が少ないうち(数個以内)に摘出し、治癒できれば、苦痛も少なく、理想的ですが、再発を繰り返す事も多く、ある程度数が増えてしまうと、摘出時の苦痛が大きく、お子様も暴れてしまい、通院がトラウマになってしまうなど、どちらの方針が良いか、一概に言えない所があります(実際に、当院でも、再発を繰り返す度に水いぼの摘除を行ったお子様が、苦痛を感じて、来院しなくなってしまうケースをしばしば経験しております)。

摘出する場合は、ピンセット(トラコーマ攝子)による水いぼ除去が基本治療です(残念ながら、麻酔テープを貼っても痛みを完全に抑える事はできず、或いは恐怖心から、摘出時にお子様が暴れてしまうケースが多いです)。もともと小児の場合はアトピー性皮膚炎、湿疹体質がベースにあることが多く、そちらの治療もしっかり行うと肌のバリア機能が改善し、治りが早いです。また自然消退時にモルスカム反応といい、かゆみを伴うことも多く、多くの場合その時点でかきむしり、悪化してしまうこともあり、摘除以外でもスキンケア等の治療もしっかりと行うべきです。モルスカム反応を起こして、消退が予想される水いぼは、スキンケアやかかないように生活指導するのみで、摘出しないこともあります。

〇当院での水いぼ治療の流れ
 診察の上、水いぼの状態、個数や、社会的な状況、お子様の個性などを考慮しながら、保存的加療をするか、摘除するかを判断しておりますが、お子様が摘除時の苦痛を理由に、通院を中途で止めてしまうケースを多く経験した事に加え、近年、自費診療ではありますが、水いぼに対し効果の期待できる外用薬が登場した事から、現在、当院では、下記の方針で治療を行っております。
 
 ①保存的加療
 積極的な治療をご希望されない場合は、漢方薬の内服、保湿剤の外用等で経過を見ます。これだけでも、数カ月で水いぼが消えてしまうケースを経験しますが、残念ながら、治癒まで1年以上かかるケースもしばしば経験します。
 
   ②水いぼクリーム(3A M-BFクリーム)による治療 (自費診療:1本 2200円(税込))
 積極的な治療をご希望される場合は、近年登場した、水いぼクリーム(3A M-BFクリーム)による治療を第一選択としてお勧めしています。水いぼのある部位とその周辺に、銀イオン配合クリームを1日2回塗布して、治癒を目指す治療です。2~3か月程度の外用で、奏効率は7~8割程度との報告があります。自費診療にはなりますが、痛みを伴わない為、今後、期待の持てる治療法です。
 
 ③摘除
 水いぼの数が少なく(数個以内)、お子様が摘除時の痛みを我慢できる(摘除時に暴れない)場合にのみ、摘除を検討します。摘除する場合、無麻酔で行うと痛みが強い場合も多く、麻酔テープを貼ってから摘除を行う場合がありますが、1~2時間前から麻酔テープを貼付する必要がある為、摘除は後日の予約制となります。数が多い場合(概ね10個以上)は、お子様の苦痛も大きい事から、基本的には摘除は行わず、保存的加療か、水いぼクリームの外用で経過を見る方針としています。
 
 
 現在、当院では、マンパワーの不足もあり、①或いは②の対応を基本的な治療方針とし、積極的な摘除は行っておりません(摘除を行う場合も、水いぼの数が少なく、痛みを我慢できるケースに限定しております)。ご迷惑をお掛けしますが、ご理解のほど、よろしくお願い致します。